皆さんは、次の質問に答えられますか?
①「スケートでスピンしてる時どこみてるの?」
②「サッカーでシュートする時、ゴールのどこを狙うの?」
③「野球のピッチャーは、どこを目掛けて投げるの?」
これらの素人的な質問は、失礼ながら私が世界トップレベルの選手たちに実際に尋ねた質問です。
驚くことに、返ってきた答えはほぼ共通していて
「どこも見ていない!」
でした。
当初、その答えに「???」な感じでしたが、
選手たちに、より掘り下げて質問してみると「???」の謎が解けました。分かりやすい例として、プロサッカー選手との会話をご紹介します。
青嶋:「ゴール前でシュートを蹴る時って、まずゴールキーパーがいて、ガードの選手が何人も視界を邪魔していて、一体どこを目標にボール蹴るの?」
選手:「目標ないです」
青嶋:「適当に蹴るの???」
選手:「言ってみれば、そうです!」
青嶋:「どういう事?」
選手:「プロのレベルでは、何処にボールを蹴るかを考えるコンマ何秒という時間を敵に与えたら、完全にボールを奪われます。
自分はフォワードなので、まず後ろから味方のパスが来ることを信じて全速力でゴール方向へ走る。
パスが来たら、自分が走って来たスピードや周りの視野から自分がピッチ内の何処にいるか瞬時にポジションを感覚的に判断して、その位置から予想されるゴールが狙える方向に自然と身体が反応してボールを思いっきり蹴り出すだけ。ゴールキーパーなどを避けてラインを狙ってボールを蹴るイメージではないんです。」
この会話から、自分のプレーは身体と頭の中に、しっかり記憶されていて大袈裟に言うと目を閉じていても出来るレベルにある、ということがわかります。
プロのサッカー選手のレベルの高さを実感させられたエピソードです。
パフォーマンス発揮の妨げになるもの
先程の会話のあと、同じ選手から
「試合の時には一つの違和感も感じたくない」
と言われたことを思い出しました。
当初はピンと来ませんでしたが、これだけ究極の状況下でのプレーをする選手にとって、『自分の持つ体力+神経(感覚)』を全集中したパフォーマンスを試合で発揮するためには、『余計な肉体的+感覚的なストレス』を排除することが、絶対条件であるのだと理解したのです。
つまり、痛みを実際に感じていなかったとしても、
「走った時にスピードが乗らない感じ」
「膝がちょっと左にブレてる感じ」
「足を踏み込んだ時に最後の最後に踏ん張りきれない」
などのとても限定的な違和感の訴えさえも
「全集中の妨げになるので、なんとかして欲しい」
という意味だったのですね。
アスリートのコンディショニングをする意味を、再考させられました。
理想のプレーを実現させるためには
アスリートの考える全神経集中のプレーを実現させるために私が出来ることは、アスリートの理想に近いコンディションを常に作り出すことです。
つまり、問題点の排除とコンディションのアベレージをあげることが目標となります。
そこで、目標実現のため、次の3つの点について、重点的に取り組むようにしています。
①問題点の見える化
- 身体の疲れの溜まり具合を自分で見極める簡単な方法を提供する(関節可動域の見極め方など)。
- コンディショニングに対する意識を高める。
- 問題点を本人が自覚する。
②情報共有
- 過去25年に数々のオリンピックアスリートなどの実体験より解決策を導く。
- 競技の違いを超え、走る、跳ぶ、回るなどの動作から共通項を探し問題解決に導く。
③自立化
- 受け身になりがちな選手にコンディショニングの重要性を理解してもらい、自分から積極的に取組んでもらう(受け身のコンディショニングより遥かに良い結果が期待できる)。
これらの取り組みの最終目標はコンディショニングが自己責任である事を理解してもらう事です。
「面倒だからやらない」
「痛いからやらない」
「時間が無い」
「言われた通りやってる」
こんな理由で、コンディショニングが出来ていないと、
質の良い練習が出来ない(練習する意味が無い)という意識に変化させるのが、私流のやり方です。
ゴールの差はあれ、このスタンスで練習に取り組むアスリートは、自分自身が納得出来るアスリート人生を歩んでいる様に見えます。
自分の金メダルを手に入れる近道は、質も良いコンディショニングを自分で身につける事だからです。
コンディショニングはトップアスリートが必要な事ではなく、一般のお子さんたちもスポーツをする際にセットで身につけるべきだと考えています。
金メダルを獲るコツ Vol.3、いかがでしたか?
多くのアスリートが、各々の目標に向かって取り組むべき課題は少しずつ違うとはいえ、根本的な部分で乗り越えなければならない点は同じだということが、シリーズを通してわかっていただけるのではないかと思います。
最後に、コンディショニングにより、不調なサッカー選手が劇的に復活した例をご紹介します。
①膝のお皿の上にイメージした横一直線を、親指で順番に深くセルフマッサージする(硬いところを見つけたら時間をかけて緩める)。
→大腿四頭筋のバランスを取れてプレーが安定する。
②足首(アキレス腱の奥)の硬さを見つけてセルフマッサージ。
→疲れが取れて足首の可動域が回復して走るのが速くなる。
③鼠蹊部近くの内腿深く(腸腰筋)のコリをセルフマッサージ。
→下半身が軽く感じて運動パフォーマンスが増す。